相続が起こるタイミングというのは、誰かが亡くなった時です。そのような中でも、着実に相続税の申告期限は近づいてきます。申告期限を過ぎた、申告漏れが発生したということが無いように、相続税申告の手続き方法と必要書類を知っておきましょう。
相続税申告について

相続が起こるタイミングというのは、誰かが亡くなった時です。
身内が亡くなると、お葬式や香典返しの準備などに追われ、身体的にも精神的にも負担が大きくなります。
ただそのような中でも、着実に相続税の申告期限は近づいてきます。
手続きが複雑で、身内での協議も必要なので、相続税の申告もご遺族にとって大きな負担の一つとなるかもしれません。
申告期限を過ぎた、申告漏れが発生したということが無いように、相続税申告の手続き方法と必要書類についてしっかりと理解しておくことが大切です。
今回は相続税の申告について、以下の観点から解説していきます。
- 相続税を申告するまでの主な流れ
- 申告に必要な書類
- 申告で問題が発生したらどうなるの?
- 困ったときの相談先
この記事が、正確な相続税の申告に役立てば幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
相続税申告の流れ
まずは相続税の申告に必要な流れについて説明します。
相続税の申告までにやらなければならないことは意外と多いです。
きちんと確認し、計画的に行いましょう。
相続が発生する
相続が発生するのは、誰かがお亡くなりになったときです。
お亡くなりになった人は被相続人とされ、その人が持っていた財産について、相続が行われることになります。
この時点では、相続財産は相続人全員のものとみなされています。
この状態から「誰が何を受け継ぐのか」を決めていかなければなりません。
相続財産の特定をする
まず、相続財産(いわゆる遺産)の特定をします。
これは、被相続人が持っていた財産をリストアップする作業であると言えます。
被相続人が遺産を全てわかりやすく残してくれていればスムーズに作業が進みますが、なかなかそうはいかないでしょう。
知らない土地を持っていたり、債務があきらかになったりということもあり得ます。
被相続人が持っていた財産をすべてもれなく確認する必要があるのです。
相続財産の評価をする
相続財産の特定ができたら、次はその財産の評価をしていきます。
財産には簡単に価格が分かる、現金預金などもありますが、土地や建物、書画、骨董品などは明確な価格や価値が分かりません。
そのような値段のついていない財産に対して、評価を行うことでそれぞれの価格を設定していく作業が「相続財産の評価」です。
遺産分割協議をし、名義を変更する
相続財産の評価が終わったら、次は「誰がどれだけ遺産をもらうか」という遺産分割協議の段階に入ります。
先ほども述べたように、財産は現金だけではありません。
誰がいくら分の財産を受け継ぐのか、どの財産を受け継ぐのか、というのを話し合わなければならず、非常に難しい協議だといえます。
ここで、相続人同士が揉め、時間がかかってしまうことも少なくないでしょう。
時間的余裕を確保したうえで、相続人で協力して考えていく必要があるでしょう。
遺産分割協議の末、それぞれが引き継ぐ資産が決まったら、次は財産の名義変更をします。
これにより遺産分割が完了します。
相続税を申告する
遺産分割が終わったら、相続税を申告します。
相続税申告は、相続を知った日(被相続人の死亡日)の翌日から10ヵ月が期限です。
被相続人と近い関係であれば、相続を知るタイミングは被相続人が亡くなった時となりますが、もし長らく連絡が取れず、相続を知るタイミングが遅くなった場合には、被相続人の死亡日ではなく、相続を知った日のほうを優先して期限を計算します。
つまり、相続人の間でも「相続を知った日」が違えば、相続税申告の期限がバラバラになることがあるということです。
相続税申告の必要書類

では、実際に相続税の申告を行う時に、必要なものは何なのでしょう。
相続税申告の時に必要な書類は相続税申告書と添付書類の二種類に分けられます。
相続税申請書
まず、指定の様式の相続税申告書についてです。
申告書は第1表から、第15表まであります。
このうち、該当するところだけを埋めていくという作業になります。
相続税の計算は初めてという方が多いでしょう。
必要書類の多さを見ただけでも憂鬱な気分になってしまうかもしれません。
作成の仕方や順序を確認して、なるべくミスなくスムーズに作成できるようにしましょう。
資料の作成の際に心掛けるべきことは、第1表から第15表まであるうちの、前から順番に書いていくのではなく、明細書から書いていくということです。
以下の順番で書類を完成させることをお勧めします。
明細書の作成
まずは明細書から記入しましょう。
生命保険・退職金などの明細書を記入します。
次に、小規模宅地等、特定計画山林または特定事業用資産についての課税価格の計算明細書(宅地についての明細)、相続時精算課税適用財産の明細書、相続時精算課税分の贈与税額控除額の計算書、相続税がかかる財産の明細書、特例農地等の明細書などを埋めていきます。
農地を持っていないなど、該当しないところは飛ばしてください。
控除の計算書の作成
次に、控除の計算書を作ります。
配偶者控除、未成年者控除、障がい者控除など、適用するものを記入します。
総額をまとめる
最後に、これまでの総額をまとめて、第1表と第2表に記入します。
該当の方は「財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額の計算書」も忘れないようにご記入ください。
添付書類
相続税申請書のほかに添付しなければならない書類も多くあります。
しっかりと確認して抜け漏れのないように準備しましょう。
本人確認書類
まず、本人の確認がとれる書類が必要です。
マイナンバーカードや運転免許証など、身分を証明できる書類を相続人全員分用意しましょう。
相続財産を評価するための書類
相続財産の評価のためには主に以下の書類が必要です。
この他の書類も必要となる場合があります。
詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
- 土地・建物関連登記事項証明書、固定資産税の評価証明書、実測図など
- 株式関連銘柄別一覧表、売買報告書、株主名簿など
- 預貯金関連残高証明書、預金証書、預貯金通帳など
- 債務の証拠となる書類金銭消費貸借契約書、借入金残高証明書、借用書などの明細
- 未払い金関連請求書や領収書
- 葬儀関連葬儀費用出納帳など
身分関係を説明するための書類
被相続人と相続人の身分関係を説明するための書類も必要です。
- 被相続人の戸籍・除籍謄本、戸籍の附票、住民票
- 相続人全員分の印鑑証明書、戸籍・除籍謄本、戸籍の附票、住民票
申告に際して問題が発生した場合
相続税の申告を行う中で、手続きを間違えてしまったり、期限に間に合わなかったりした場合、どのような対応がとられるのでしょうか。
もちろん、トラブルがないことが一番ですが、申告ミスが起きてしまった時に慌てることのないよう、確認しておきましょう。
申告までに遺産分割協議が終わらない場合
相続人同士の人間関係によっては、遺産分割協議でかなりもめてしまうケースがあります。
相続税の申告までに、遺産分割協議が完了しなかった場合、どのような対応がとられるのでしょうか?
もし、相続税申告までに遺産分割協議が終わらなかった場合、終わらなかったからと言って期限の延長はありません。
いったん法定相続割合に応じて財産を取得したものとして計算を行い、納税をすることになっています。
相続税というのは、まず課税遺産総額についての相続税を計算し、その金額を各人が得た財産の価格に応じて配分するという仕組みになっています。
つまり、遺産分割の仕方によって、相続人それぞれの相続税の負担額が変わっても、全体としての相続税の金額は変わらないのです。
そのため、いったん法定相続割合に応じて納税を行ったのち、遺産分割協議が整い、分割が終わった時点で更生の手続きをします。
そして、相続人は払いすぎた税金を税務署から返してもらうか、払っていない税金を追加で払うという流れになります。
実際には、税務署を通してやり取りをしなくても、相続人の間で直接精算することも許容されています。
提出書類としては「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出します。
これは未分割のまま、相続税の申告をすることを示す書類です。
相続税申告の期限を過ぎてしまう場合
相続税申告の期限に間に合わなかったらどうなるのでしょうか?
まず、期限内に申告しなかったことによって、無申告加算税が課されます。
これは、本来支払うべき税にさらに5%分加算されるものです。
無申告加算税は、期限よりも1日遅れただけでもかかってしまいます。
しかしこれは、税務署から連絡が来る前に自分から申告した場合です。
もし、申告前に税務署から連絡が来てしまったらどうなるのでしょうか。
税務署から連絡がきた後で申告した場合は、無申告加算税が15%~20%になります。
さらに、期限内に申告していたら得られたであろう、さまざまな特例が使えなくなることがあります。
例えば、小規模宅地の特例が適用できなくなることなどがあげられます。
このように、期限内に申告していれば課されない税金を支払うことになってしまう可能性があります。
以上から、期限内に申告をしないことのデメリットがかなり大きいことが分かったのではないでしょうか。
期限内に申告を間に合わせることはとても重要です。
しかし、もしも期限内に申告ができる見込みが立たなくなった場合は、すぐに税理士に相談することをおすすめします。
申告漏れが発生した場合
期限内に申告をしていたものの、申告漏れがあった場合はどうなるのでしょうか。
この場合、自主的に修正申告をしたときには、過少申告加算税はかかりません。
しかし、税務調査で指摘されて修正申告をした場合は過少申告加算税がかかります。
さらに、財産隠しや偽装を行った場合は重加算税が課されます。
重加算税は、申告をした上で隠していた場合は相続税の35%、申告がなかった場合で財産を隠していれば40%が加算されます。
相続税が0円になる場合
相続財産がほとんどなく、そもそも相続税の申告をしなくてもいいという人もいます。
ただ、相続税の配偶者控除や、小規模宅地の特例など、税を軽減するための制度を使うならば、結果として納税金額が0になったとしても相続税申告をしてください。
例えば、「うちには財産がないから相続税申告が不要だ」と思っていたのに、のちにタンスの裏の方から預金通帳が出てきたとします。
この場合、予め申告をしていれば、修正申告をするだけで済みます。
しかし、もし申告をしていなかった場合には、無申告加算税が課されてしまいます。
相続財産の全てを完璧に把握できる人はなかなかいないのではないでしょうか。
「相続財産はあまりないだろう」と思っていても、思いがけないところで財産を保有している可能性もあります。
結果として無申告になってしまったということのないように、相続財産はきちんと調査し、相続税がかからないと思っても申告しておくことをおすすめします。
相続税申告で困ったら誰に相談する?

ここまで、相続税申告について解説してきましたが、手続きが複雑で難しいものであることが分かったと思います。
相続税の申告の過程で困ってしまった時、誰に相談すればよいのでしょう?
困っている内容によって相談すべき相手が異なるので、以下を参考にしてください。
相続税申告の手続きそのものは税理士
税理士は、相続税申告書の作成を代理できる権限をもっています。
そのため、相続税の申告の手続き自体でなにか困ったことがある場合は、税理士への相談をお勧めします。
期限ぎりぎりではなく、ある程度余裕を持って相談をもちかけるといいでしょう。
遺産分割協議書は行政書士
遺産分割協議書の作成、戸籍の収集などは行政書士が行うことができます。
もちろん、自分で収集・作成することもできます。
しかし、相続税申告までは10ヵ月しか時間がありません。
自分で動かずに行政書士の方に動いてもらった方が、時間を節約できて効率的でしょう。
土地建物の名義変更は司法書士
土地建物の名義変更など、登記に関することは司法書士に任せると良いです。
自分で法務局に何度も足を運ぶ必要がなくなるので、自分で行うよりも楽に手続きが進められるでしょう。
遺産分割で紛争が起きれば弁護士
万が一、遺産分割でもめてしまったら弁護士に相談しましょう。
他の相続人と顔を合わせるのが怖い場合でも、弁護士が交渉の代理をしてくれるので安心です。
相続税申告についてまとめ

今回は、相続税の申告についてご紹介しました。
複雑な手続きも多く、大変な作業ですが、期限内に申告できるように動くことが大切です。
自分で行うのが大変な場合は、専門家の力も借りながら、計画的に進めていきましょう。
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